空 力 基 礎 知 識


●大いなる誤解
エアロパーツをある程度ご存知の方でも、時として大いなる誤解をしている人が居ます。
・エアロパーツを装着すると最高速が伸びる
・エアロパーツを装着すると燃費が良くなる

と、思っている人は居ませんか??ちょっと聞いて下さい。
多分マルガヒルズのエアロ(たぶん他社製品も同じだと思うけど)をつけても、
目に見えてそういう効果は期待できません!


● ダウンフォースとドラッグ
空力的な評価をする時、ダウンフォースとドラッグと言う2つの言葉が出てきます。
この2つを知っていれば、仲間内でだいたい分かってるような顔が出来ます
ダウンフォースとは、車体を地面に押さえつけようとする力です。
ドラッグとは空気抵抗だと思って下さい。
例えば、ウイング一つ、リップスポイラー一つ付けても、この値は変わってきます。
ウイングを取り付けたとします。翼断面がちゃんと設計されたものであれば、ダウンフォースは発生します。しかし同時にドラッグも発生するわけです。
それまで、ストレートで250km/h出た車にウイングを取り付けたら、240km/hしか出なくなったとしたら、ウイングのドラッグ(=抵抗)のせいです
しかし、その代わりに高速コーナーでスピンしそうで全開に出来なかったのが、リアのダウンフォースのお陰でタイヤの接地圧が上がり、グリップが良くなって、全開で行っても安定するようになったと言う事は有るかもしれません。
その結果、ストレートで1秒遅くなるけれど、コーナーで2秒速く走る事が出来たとしたら、ウイングを取り付けた事により、1秒タイムアップした事になります。


● 前後のバランス
車の性能はあくまでもトータルバランスです。
リアにウイングを付けて、ダウンフォースが出れば、相対的にフロントのダウンフォースが不足する事も有ります。簡単な対策として、フロントにリップスポイラーを取り付る等して、車体の下側に入り込もうとする空気を、少なくする事によって、ダウンフォースを発生させて、フロントの接地圧を確保します。
絶対的なベストセッティングと言うものは有りません。
あの、F1ですら、同じ2台のマシンの二人のドライバーの乗り方や好みで、セッティングは変わってきます。
貴方は自信を持って自分自身のベストセッティングを探せば良いのです。


● 性能の良し悪しって何?
ダウンフォースとドラッグが、性能の決め手と言いましたが、例えば最悪のウイングとはどんなもんでしょうか?
「空気抵抗にはなるが、ちっともダウンフォースは発生していない」
こんなウイングはいくらカッコ良くても最悪です。
もっとも、性能はある程度形に表れますから、いかにも性能悪そうなウイングは、
計ってみても性能は悪いものです。
では、良いウイングとはどんなウイングでしょうか?
「高速域でのドラッグが低く、中速域でもダウンフォースが落ちないもの。」
これが良いウイングでしょう。でも、言うは易し、西川きよしでして、各レーシングチームは、これを探す終わりの無い旅を続けている訳です。

〜〜〜☆ ワンポイント雑学 ☆〜〜〜

●スポイラー形状
最近のフロントスポイラーで全面エアダム形状のものではなく、真ん中がせり上がった形状のものが多いと思いませんか?
これはただのデザインの流行ではなく意味がある形状なのです。
リップスポイラーであれ、フルバンパースポイラーであれ最大の目的は、車体の下側に入り込もうとする空気を、少なくする事によって、ダウンフォースを発生させて、フロントの接地圧を確保する事です。
レーシングカーの場合、街乗りとは比べ物にならないくらい車高を下げますから、スポイラー下端と地面の隙間は非常に小さくなります。これによってかなりのダウンフォースを発生させている訳です。
ガチガチに固めたサスも少しは動きますから、フルブレーキング時のノーズダイブで、隙間は更に狭くなりますし、コーナーを立ち上がり、フル加速する時には逆に隙間は広がります。そこで特性が急激に変化する事が有るのです。
例えば中速コーナーの進入で、減速時にはフロンとヘビーでオーバーステア気味で、加速に移ったとたんにアンダーステアになってアウト側にすっ飛んで行くとか…・・
そういう事が起こり得る訳です。
その加減速時の過渡特性を和らげ、コントロールをし易くする為に、センター付近を持ち上げ、空気の流量の変化を緩慢にする為のデザインであった訳です。


● サーキットと公道の違い
そんな事言われなくっても・・・とお思いでしょうか?
先ほどエアロパーツを付けると抵抗になって最高速が落ちる・・・というような話をしました。
でも、たぶん体感的には性能が上がったような気がするはずです。
ご安心ください、これは錯覚でも何もありません。
普段の貴方の公道上での走行は全開走行でしょうか?
恐らく答えはNOでしょうね、それで。いいんです
レースにおけるアクセルワークは殆どが全開全閉です。
パーシャルで合わせながら走る区間は、雨でもなければそれほど多くありません。
全開にするからどれだけがエアロパーツに食われているかが体感できるのです。
ところが公道では、ベタ踏みの全開にする事は稀です。
例え峠道を速く走ろうとしていてもどこかで精神的なブレーキが働いて全開になっていないことが多い。
でも、体感的に前に出て行く力が弱いと自然に右足が動いてより深くアクセルを踏んでいます。無意識に余裕を残しているから、パワーダウンした分無意識に補正しているのです。
そしてパワーダウンは感じられないままでダウンフォースの恩恵だけは確実に受けているのでトータルでの性能向上と感じるのです。

つづく・・・・ To be continue

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